小栗虫太郎展 開催レポート

※展示会が終了した後は仕事等で多忙につき、レポートの更新が遅くなりまして申し訳ありませんでした。
なお、駆け足で記事の作成をしておりますため、後日時間をとって追記等して生きたたいと思います。

2024年10月7日〜10月19日にかけて、神田神保町の東京古書会館にて開催された小栗虫太郎展が無事終了しました。
お越しいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

以下は受付を担当いたしました虫孫がその時の様子などをおまとめいたしました。

大変長くなりますのでご興味のある部分のみお読みくだされば、と思います。

※掲載しているそれぞれのお写真はご許可を頂戴し掲載しております。

延べ600人以上の方にお越しいただきました

11日という短い開催期間中でしたが延べ600人以上の方にお越しいただけました。

遠方では東北や関西、九州からもお越しくださった方も、思ったよりも多くいらっしゃいました。

ファンの皆さま、作家の先生や古書店主さま書店員さま、出版社の方、そして虫太郎自身がお世話になった方のご遺族の方など、様々な方がお見えになり、一部の方々ではございますがお話をさせていただき、とても貴重な体験をいたしました。

展示等についてのご説明

会場の展示は、入り口から反時計回りに

  • 小栗虫太郎の生涯
  • 黒死館殺人事件と素天堂
  • 小栗虫太郎の文学世界


という構成になっています。

【小栗虫太郎の生涯】

このコーナーは主に写真と、著書、そして「小伝・小栗虫太郎」を展示いたしました。

写真等について

今回は、成蹊大学図書館所蔵、かごしま近代文学館所蔵、そして古書に掲載された写真を使用致しました。

ことに、かごしま近代文学館所蔵の、海音寺潮五郎さんとご一緒の写真につきまして、虫太郎の写真として展示されたのは、小樽文学館(2022年12月~翌1月に小栗虫太郎展を開催)の展示が最初であったことは、記させて頂きます。

また、今年10月3日に静岡県の冨士霊園に日本文藝家協会さまが管理されている「文學者之墓」に小栗虫太郎の遺骨を埋葬いたしましたが(文京区の源覚寺からは事前に分骨済み)、その際の墓碑の写真、そしてそのために作成した遺影の写真等も飾られました。

【「小伝・小栗虫太郎」について】

虫太郎の三男である小栗宣治が執筆、桃源社『紅殻駱駝の秘密』(一九七〇)刊行の際に掲載されました。息子から見た父、虫太郎の生涯が描かれています。

著書の展示について

ガラスケースの二段目三段目には、沢田安史氏のコレクションを軸に、初出誌や書籍を並べました。

沢田安史さんは、虫太郎本の著名な蒐集家でいらっしゃいます。この展示の場所が東京古書会館ですので、地階で古書の展示即売会が開催されている日などは、このコーナーを目当てにいらっしゃる方も多かった印象がありました。

【黒死館殺人事件と素天堂】

小栗虫太郎の代表作『黒死館殺人事件』をめぐるコーナーです。

素天堂の名で知られ、令和五(二〇二三)年八月二日に永眠された山口雄也(かつや)氏が生涯にわたり語彙蒐集・調査された『黒死館殺人事件』に関する資料を公開しています。

素天堂氏の若い頃に執筆した同人誌や黒死館殺人事件の調査ノートなど、そしてのちに素天堂氏の長年にわたる蒐集調査が形となった作品社『【「新青年」版】黒死館殺人事件』、そしてご本人のお写真等が展示されました。

特に膨大な黒死館関連の資料は圧巻で、雑誌『幻影城』の新人賞・評論部門に氏が応募した『黒死館構造図 実測作成のための覚書』原稿や『黒死館殺人事件』作品中の出来事を時系列順に並べた『黒死館関連年表』、氏とその相棒(夫人)である絹山絹子氏の共著、同人誌『黒死館逍遥』全12巻と別巻2巻、などが並びました。

この素天堂氏のコーナーは、目にするチャンスが次回はいつになるかと考えると、今回の展示は実に貴重な機会になったと思います。

【小栗虫太郎の文学世界】

成蹊大学の浜田雄介教授による、近年の近代文学研究における小栗虫太郎の位置づけの考察からはじまり、成蹊大学図書館所蔵の原稿類(複写)を豊富に展示していただきました。

『完全犯罪』原稿や、非常に細かな字で書かれた『白蟻』原稿、未確認作品の草稿等々。

そして成蹊大学院生と、修了生である鹿児島大学助教・鈴木優作氏による虫太郎作品の解説等を付しました。

また、小樽文学館の亀井志乃館長により2024年に発見された、歌詩『青空』に掲載の虫太郎の短歌や、二松学舎大学の山口直孝教授により地方紙への掲載が確認され、2021年に春陽堂書店さんより出版された『亜細亜の旗』書籍、また2017年に成蹊大学図書館にて開催された展示「小栗虫太郎-PANDEMONIUM(大魔城)の扉を開く」のパンフレットも展示されました。

虫太郎の筆跡がわかる構想メモや草稿類の展示は、過去にはあまりなかったことと思われます。

なお、今回の小栗虫太郎展で作成したパネルの解説をもとに、バージョンアップした解説文章を3月発行の『成蹊人文研究』33号に掲載されるとのことです。これについては別途記事にいたします。

【無料配布物について】

今回は展示のみならず配布物や仕掛けで来場者の方にお楽しみいただけるイベントとなりました。

虫太郎作品やミステリーに関連したフライヤーも皆さまへの有益な情報であり、楽しい手土産になったと思います。

「白蟻」「完全犯罪」栞

個数限定、あっという間になくなる日もありました!

この栞は今回の展示に携わってくださった成蹊大学院生の方々が企画・制作してくださったもので、個数限定ではありますがご用意させていただきました。

今回の展示会はXを主な情報発信のメディアにしておりましたが、栞についてもみなさんXをチェックくださっていたようで、配布時間直前にお越しくださり、配布を待ってくださる方がたくさんいらっしゃいました。

初日以外は10時と14時に配布させて頂きましたが、みなさまとても楽しみにしてくださり、10分程度でなくなる日もありました。

「白蟻」の栞は『白蟻』の原稿を6分割した6種類があり、6枚揃えると原稿用紙一枚になるという楽しい仕掛けがあるものです。

「完全犯罪」の栞は一種類で、これは完全犯罪の一枚目原稿を用いており、現行作品との違いなどの解説がついています。

フライヤー類

まずなんといっても当展示のフライヤー(チラシ)です。
玉川重機さんの緻密かつ愛らしさのあるイラストと、虫太郎の写真が表裏。玉川さんのイラストは、図録の表紙でもご覧頂けます。

その他は以下のフライヤーを配布しておりました。

11月25日に発売となった春陽文庫『女人果』

膨大な注釈付きの作品社『【「新青年」版】黒死館殺人事件』

今回実行委員としてもお世話になったYOUCHANさんのとても綺麗なフライヤー

これらを来場者の方にお配りいたしましたが、こちらもとても好評でした。

「「小栗虫太郎関係資料(一)」『成蹊國文』抜刷」

今回の配布物としてもうひとつ「「小栗虫太郎関係資料(一)」『成蹊國文』抜刷」がありました。

成蹊國文は、成蹊大学文学部の発行書物であり、一般販売はされていないもので、今回の配布物は令和六年三月十五日発行の第五十七号に掲載された「小栗虫太郎関係資料(一)「菊芋」関係草稿(一)」部分を抜き刷りしたものです。

成蹊大学さまが今回の展示のために増刷してくださっていました。

こちらはかなり部数が限られており、早々になくなってしまいましたが、成蹊大学さんのサイトで閲覧いただくことができます。

小栗虫太郎関係資料紹介(一) : 「菊芋」関係草稿(一)、「海峡天地会」草稿

【物販コーナー】

展示に次いで今回人気となったのが物販のコーナーです。

古書会館での展示イベントとしては物販は異例だったようで最初は可能かわからなかったのですが

  • まず図録があるのでそれを売らないといらしてくださった方が不便
  • 虫太郎をそれほど知らない方が来られたあと、気軽に書籍を見て頂きたい
  • 黒死館しか読んでない方に他の作品も読んでほしい
  • 虫太郎以外にも新青年の作家等の作品も読んでほしい
  • 今回参加されたイラストレーターさんの素敵な作品も置きたい
  • そもそも展示の後に物販があると嬉しい(見た後は買いたい)

というさまざまな希望で販売可能となりました。

実際に物販コーナーはとても盛り上がり、思った以上にたくさんのものを購入していただきました。

物販コーナーは主に書籍とグッズ、図録に分けられ、グッズは古い絵葉書から虫太郎展実行委員でもある玉川重機さん、YOUCHANさん制作の絵葉書、素天堂さん&絹山絹子さんによる「黒死館学園入試問題集」などを販売しました。

書籍は実行委員の手元にあるものを中心に、虫太郎の作品はもちろん『新青年』の時代の作家たちの作品、中井英夫の初版本など貴重なものも販売いたしました。

図録について

今回の小栗虫太郎展では図録を販売し、非常に好評でした。

物販コーナーがないと図録を手に入れられない寂しい展示会になってしまったので売ることができて本当によかったです!

この図録は実は今回の小栗虫太郎展のために製作したものではなく、そもそも2022年12月から2023年1月にかけて、小樽文学館にて開催された「生誕121年 小栗虫太郎」のために作られたものです。

生誕121年 小栗虫太郎展 | 小樽文学館

ですがコロナ禍だったことと、図録に掲載するものがどんどん企画段階で増えてしまい、小樽に間に合わず、今回のタイミングとなりました。

ですがそのおかげで、より一層充実した、一種の小栗虫太郎作品のデータベースとも言える一冊になりました。

書籍コーナー

書籍は小栗虫太郎をはじめとする昭和初期の作家(特に探偵小説)の作品を中心に、小栗虫太郎展実行委員が自身が所蔵しているものを中心に販売しました。

写真の向こう側には『新青年趣味』と小栗虫太郎のコーナーとなっています。

本当に売れ行きが良く、途中で仕入れに行くこともありました。(神保町でイベントやって本当によかったです!笑)

たくさんの方が「持っていなかった虫太郎の本」や「読んでみたいと思っていた作家の本」「探していた初版本」などを手に入れて頂き、お喜び頂いてとても嬉しかったです。

グッズコーナー

グッズコーナーでは以下のものなどを販売していました。

まず大人気だった「黒死館学園入試問題集」

部数が限られていたというのもあり、来られる方来られる方手に取って購入され、早めになくなってしまいましたが、途中で数部を絹山さんが追加してくださいました。本当にありがとうございました。

こちらは玉川重機さん、YOUCHANさんの綺麗な絵葉書。

絵葉書は図録とセットで購入される方が多かったです。

こちらは会場に展示もされていた玉川重機さんの複製原画、オリジナルの袋付きでした!お心配りありがとうございます。

(撮影状態が悪く光ってしまいすみません)

なお、玉川重機さんの販売物については、一部「たとるBOOTH店」でご購入いただけるようです!

たとるBOOTH店

こちらも会場に展示されていた「法水麟太郎L版ミニフレーム」はYOUCHANさん作。

グッズの売れ行きがよく、品薄になってきてしまって「何か持ってきてください!」という虫孫の悲鳴を聞きつけ、YOUCHANさんが途中で追加してくださった探偵モチーフ缶バッヂもありました。

なんとこのバッヂはXでポストする前に完売してしまいました…。

終わりに(虫孫の所感です)

あっというまの2週間でしたが、たくさんの愛好家の方、作家の先生方などにお越しいただき、虫太郎がまだとても興味関心を持たれていること、そして支持いただけていることに感銘を覚える日々でした。たくさんのうれしいお言葉も頂戴致しました。

お若い方々が思ったよりもご来場くださったことは喜びでしたが、いっぽう熟年の方が、日々の忙しさで遠ざかっていたがまた古い本を取り出して読んでみようと思うとおっしゃられていたりと、印象深いことがいろいろありました。

いらしてくださいました方々と、協力くださいました実行委員会の方々、東京古書会館や古書組合の方々、かかわってくださいましたすべての方々に、厚く御礼申し上げます。

どうもありがとうございました。

なお、ギャラリートークについては別途記事にしたいと思っております。

(文責:成井徳子/江波戸泰子)